◆田んぼだより

平成21年5月号

《岩手県江刺ひとめぼれ(金札米)米寿記念田植え》

5月15日(金)、当店で10年ほど前から継続して使用しているお米、岩手県「江刺ひとめぼれ」(ブランド名:江刺金札米)の誕生88周年「米寿」記念行事の田植えに参加して参りました。

新潟の自社田んぼでは12年間米作りをしていますが岩手では初体験です。今でこそ全国穀物検定協会の最高食味ランクで15年連続「特A」評価で、昭和59年には自主流通米単価の落札価格日本一の記録をつけたりと、全国を代表する安定した高評価の江刺のお米ですが、この高品質米の歴史は大正10年(1921年)の「陸羽132号」の誕生から始まりました。

大正14年には東京市場に進出して当時の日本最高価格での取引を記録し、昭和に入ってからはニーズの高まりを受けて他との差別化から金色の米札をつけて販売開始(江刺金札米の誕生)、この間「陸羽132号」は品種改良の進化を遂げながら「ササニシキ」→「ひとめぼれ」へと主要品種を受け継いできました。

品種改良があっても高評価であり続けるところが、江刺の気候風土、生産者の一致団結した土づくりからの取り組み、農協や自治体の設備を主体とした農業近代化への注力の賜物だと思います。

因みに江刺の人が育成したこの「陸羽132号」が今のササニシキ、コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち、ヒノヒカリなど主要銘柄の親であります。当店でお客様からの人気ナンバーワンのお米であり、私も10年来一押しのお米なので、記念行事の冒頭で生産地の皆さんの前で、東京での人気の様子を紹介させていただきました。

そして今年米寿を迎えられたお年寄り6名と、地元の稲瀬小学校の5・6年生40名ほどと一緒に田植えをしましたが、遠く離れた消費地と生産地の4世代に渡る人間同士が小さなひとつの田んぼの中で、コメの苗を植えながら歴史を語り、苦労、情熱を語り、そして現実と夢を語り合うという、理想郷のような体験をさせていただきました。

私は日本のお米が大好きです。もちろん美味しいに越したことはありませんが、生産者の方々や生産地の方々は江刺に限らずともみんな一生懸命で、情熱でいっぱいです。

消費地の私には大したこともできないかもしれませんが、少なくとも会議室で日本のコメ政策を論ずるよりは、大先輩と、未来を背負う子供たちと一緒にあったかいベトの田んぼで語りながら、一年で1粒が2000粒になるコメの苗を植え続けて行きたいなと思いました。

その中から、日本が目指すべきホンモノのコメ政策の案が生まれる気がします。私の役割は大切なお米を「美味しく炊く」こと。これからも毎回の炊飯に緊張して臨みます。

店主 岡野真吾