◆田んぼだより

平成19年03月号

《里山の春の恒例行事(野うさぎ駆除)》

私どもの田んぼがある新潟県十日町市松之山では、毎年3月第二土曜日に、集落の山にこもる害獣(農作物の敵)であるウサギを獲る行事が行われています。

今年も部落の方々に混じり参加させて頂きました。かんじきを履き雪深い里山に入り、ハンターは先回りして山に上がり、追いっこは八方に分かれて山裾から同時に大声を張り上げながら、隠れるウサギを山に追い上げます。

これはウサギが山を登る方に動く習性をいかした獲り方です。余談ですが、ウサギの上昇志向の性質が縁起物と捉えられて、昔から器や絵、その他伝統の図柄に使われていることが多いようです。

そして山に逃げ上がったウサギを、待ち構えていたハンターが撃って獲ります。

追い上げと言っても、足元がひざ上まで雪にうまり、小枝をつかみながらの山登りなのでかなりの根性がいりますが、上のほうで銃声が聞こえる度に追いっこたちの士気も高まり、再び足取りも声も力強くなります。

今年で6度目の参加ですが、マンサクが咲き、フキノトウがたくさん顔を出し、出会う木々が芽吹く様に例年に比べた暖冬を実感しながら17把の大収穫でした。

手分けをして獲物のウサギを片手に持ちながら山を下り、刺身や味噌煮込み鍋にして今年の農作物の豊作(害獣被害排除)を祈念する庵を囲みます。

都会生活者である私にとり始めは残酷に思えていた行事ですが、参加してお話を聞くうちに、暮らしのために切実な思いから始められた大切な春の仕事なんだなと認識するようになり、今では松之山の伝統行事を支えるお役に少しでも立てればと思い毎年参加させていただいております。

店主 岡野真吾